もっとでっかく！

年末のある日、急に腹が空いた俺は、何か食べるものを買おうとコンビニに行った。

パンの棚の前で見ていると、視線を感じた。その方向を見ると、コンビニのバイトの店員だった。
何だ？と思ったが、次に弁当の棚に行った。すると、するとまた視線を感じた。チラリと見ると、さっきと同じコンビニの店員だった。目を合わせると向こうは逸らすので、とりあえず視線をそらして目の端で見てみた。

やはりこちらを見ている。どうやら俺のズボンを見ているようである。

知らんぷりをして棚を見ていると、その店員が近くに来て棚の並べ替えをしている風にし始めた。そんなことをしながらチラチラとみている。俺は更に知らんぷりを決め込み、見えやすいようにズボンの尻ポケットをいじってるふりをして、上着をどけてやった。
店員ははっとして、完全に視線がこちらに向き、もっこりを見ていることが分かった。

何だそんなに見たいのか、と思い、腰をわざとらしくならない程度に突き出した。その店員が棚の商品をほったらかしで釘付けになっていたので、オイオイ、と思いながら、こちらも相手を見てやると、視線が合った。相手は真っ赤になりながら目を反らした。

そのあと、誰もいないレジに品物を持って行くと、その店員が素早くダッシュで駆け寄ってきてレジを打ってくれた。
まあ、ずっと俺を見てたのだから、レジに行ったのに気が付くのも一番だろう。
その一生懸命のダッシュを見ていると、急に俺はあることを思い出し、そ知らぬふりをしてカウンターに腰を押し付け、カウンターにもっこりを乗せてやった。

あることを思い出し、というのは、実はこのカウンターもっこり乗せは、俺の家の前の今はない酒屋のもっこり店主がいつもやってたのだ。その店主はいつもチノパンやジーンズをかなりもっこりさせており、更に俺が商品を持って行くと、自慢げにデカいもっこりをカウンターに乗せながら、片手でレジを打つのである。

更にサービスなのか、一升瓶や２リッターのペットボトルを買うと、そのもっこりにそのビンの底などをこすりつけて袋に入れてくれ、俺はそのもっこりがビンに触って変形し、ビンが離れるとニセモノではないとばかりに逞しい張りを戻す様を、穴が開くほど見ていたものだった。そして、カウンターに両手ともっこりを乗せたまま、笑顔で「いつもありがとう。」とその店主は言っていたのだ。多分、自然に台に寄りかかる癖がついてたのだとは思うのだが、俺はいつも非常にかっこいいと思って見ていたのだ。

それをその時、急に思い出し、実践してみたのだ。
すると、店員はまた真っ赤になり、パンを２度も手から落としてしまった。
すみません、すみません、と何度も言っていた。

何だかかわいいな、と思いながらも、その店員のもっこりをチラリと見たが、残念ながらかなりタイトなズボンをはきながらも、ほとんどもっこりはしていなかった。
支払いが終わるまで、ずっと乗せてやった。

店員は俺の顔を見ないで下ばかり見ていた。
確かに、俺も昔、例の酒屋の主人のカウンターの上のもっこりにずっと釘付けだったのを思い出し、苦笑いしながらコンビニを出た。